「一切衆生悉有仏性」といいますが、自然や動物が仏となった例や記録はどれくらいあるのでしょうか。

いわゆる六道輪廻の六つの世界のなかで、動物が属する畜生道は、地獄道・餓鬼道と並んでもっともランクの低い「三悪道」のひとつです。よって、畜生道からなかなか一足飛びに成仏することはできません。しかし、善行を積んだり、仏教への帰依を深くしたりして、よりよい場所へ転生したと暗示するような物語は多数残っています。例えば、少し授業でも触れた堕牛譚。生前、借金をして返すこともできずに亡くなった者が、牛や馬に生まれ変わって貸し主にこき使われる。これを見抜いた僧が語りかけ、貸し主が哀れに思って借金を帳消しにすると、牛が涙を流して命を終える……そんな説話が、『出曜経』という経典から六朝の各種仏教説話集、日本の『日本霊異記』に至るまで残っています。