授業でも言及しましたが、石田英一郎『河童駒引考』が、馬と猿の関係を追究した代表的なものです。『西遊記』の完成形でも、孫悟空が三蔵の乗る馬を引いてゆく形式が出来上がります。馬や牛は、ユーラシアの各地で水神としての性格を持っているもので、とくに馬は龍と関連づけられることの多い動物です。実は、一方の猿も、中国では古く水神としての性格を持っていました。例えば禹王が治水の際に攻略し、銀の鎖を付けて封じた淮河の神として、無支祁という猿神が存在します。以前扱った植物の再生の力を秘めた柱に、同じく再生の力を持つ龍蛇が巻き付いていたように、水神の馬にも水神の猿が連結したのでしょう。