古墳時代の人々は、何をもって人の死を認識していたのでしょうか。実際はまだ生きているのに、誤って埋葬してしまうことはなかったのでしょうか。
主に呼吸をしているかどうか、そして心臓が鼓動しているか、また死後硬直など身体の変化が重要なポイントだったでしょう。仮死状態にあるものを誤って埋葬してしまうという話は、近代に至るまでいろいろ聞かれますが、古墳時代の(古墳に埋葬されるような)支配層に関しては、恐らくそれはないだろうと考えます。なぜなら、死が確認されてから古墳へ埋葬されるまで、一定の期間が経過したとみなされるからです。以前少しお話ししたモガリの儀礼などは、長ければ数ヶ月の間遺体のもとで葬送儀礼が繰り返されます。あらゆる階層の死がそのように丁重に儀式化されたわけではないでしょうが、近現代の我々のように死を何らかの瞬間として捉えられない古代の人々には、呼吸や鼓動が消えてから死を実感しうるまで、一定の時間が必要であったことは確かでしょう。