横穴式石室の導入によって遺体を目にする機会が増え、死者に対する認識が変化したとのことですが、具体的にどのように変化したのでしょうか。

遺体の損壊の様子から、逆に生への執着が強くなり、死後も生者と同じように暮らせる世界があるに違いない、死後の世界が存在するに違いないとの考えが発展したものとみられています。恐らくは横穴式石室とともに、すでに具体的な冥界観を持っていた中国の思想が入ってきたことも、原因のひとつでしょう。中国ではすでに紀元前の漢代から、天上の神仙の世界にも地下の死者の世界にも、現実世界と同様に支配者と官僚制度が整備されていると考えてきました。日本の古墳時代に影響を与える南北朝の頃には、非業の死を遂げた人物が冥界で出世しているとの観念も出来はじめており、それらは何らかの形で日本へも伝わってきていたと考えられます。