古墳の被葬者はこれから実際の死後の世界に向かうというのに、なぜ生者は玄室に死後の世界を描いたのですか。

いい質問ですねえ。玄室へ壁画を描くことは、それ自体が一種の葬送儀礼であった可能性があります。もっと正確にいえば、古墳を築造すること自体が、「送る」ことの一環なのですね。装飾古墳については、壁画を最新のモードで修飾すること、中国や半島に由来するグレードの高い知識・技術で装飾することが、大切であったのだろうと思います。中国で発見された前漢時代の馬王堆1号墓からは、死者が天上へと仙人になって上ってゆく様子を描いた、帛画がみつかっています。これなども、葬送儀礼で使用されたものと考えられています。珍敷塚古墳などの壁画の意味を考える、重要な手がかりになりますね。