国引き神話は、日本海の交易ルートからみるべきではないでしょうか。

もちろん、それは考えられますね。しかし、国引きの対象となる地域と、島根の交易圏とは、微妙にズレがあります。隠岐能登とは当然関係がありますが、同レベルで連絡のある九州が出てこない。また、朝鮮半島島根半島と結びつくのは、東方の新羅ではなく南方の伽羅周辺です(もちろん、国引き神話の形成を統一新羅前に当てた場合の想定です)。交易ルートだけから考えると、なぜ国引きの主体が水流の神なのかということも分かりません。神話としては、明らかに生活世界の成り立ち、すなわち国土の形成について説明する機能を持ったものなので、まずその観点から考える必要があります。