現在の出雲大社は、今回のさまざまな出雲神話と直接関係しているのでしょうか。また出雲神話は、現在の島根県において、大切に扱われているのでしょうか。 / いま島根県を異質な地域と思っているひとは少ないと思うのですが、いつから重要視されなくなったのですか。

出雲大社は、国作りを行った出雲の主神であるオホクニヌシが、王権側に国譲りの代償として祭祀を求め、創設された神社ということになっています。古代に出雲国造を奉祀者とし、そのまま現在まで繋がっています。各地に古代から近世に至る神話と、その再解釈の痕跡が残っていますので、前近代の文化は大切にされていると思います。とくに近世には、伊勢参りをモチーフにした出雲参詣の文化が形成され、御師たちが盛んに巡礼地=観光地化を推進しました。明治初年にも、特異な宗教文化が日常生活レベルで残っていたことは、松江に住んだ小泉八雲ラフカディオ・ハーンが伝えています。また、明治には出雲国造を受け継ぐ千家尊福が、大社教を作ってオホクニヌシを世界の主宰神とする神道を広めようとし、中央の伊勢派に敗れるという事件が起きています。その意味でも出雲は、古代以来現代に至るまで、ずっと特別な地域であったといえるかもしれません。