宮澤賢治が構想した理想郷イーハトーヴは、授業で扱ったような生死の正しさをめぐる葛藤から生み出された、と考えてもいいのでしょうか。

イーハトーヴは、確かに理想郷ではあっても、生死をめぐる苦しみや悲しみが消滅している世界ではありません。むしろ、その葛藤が際立っている、あるいは、みなその問題に自覚的である、という言い方は可能かもしれない。現実の世の中を直接舞台とすると生々しくて書けないことを、イーハトーブという架空の世界の話として描いたともいえます。現実に対して、批判としてのファンタジーの力を遺憾なく発揮したということでしょう。