八百比丘尼の話のなかに、捕まった龍王の娘が、「泣いて赦しを乞うた」という記述がありましたが、何に対して赦しを求めたか分かりませんでした。

確かに、「命乞いをした」という方が、分かりやすかったかもしれません。しかしこのユルスという言葉も、例えば漁師に捉えられた魚介を僧侶などが贖い、海に帰してやるという放生譚のなかで、多く使われる言葉なのです。それらとの齟齬がないように、文章を作成しています。ユルスという言葉は、単に罪に対して用いられるだけではなく、生命を許す、存在を許す、といった意味で使用されます。漁師という存在が、いかに海の生命に対して圧倒的であるかが、おこに込められているのです。