輪廻を前提としないと殺生戒は生じませんが、そもそも仏教の目的は輪廻からの解脱のはず。解脱できないことを前提にしているとしか思えません。
仏教は、理想を説きながらも現実を見据えていますので、すべての生命が無条件に解脱するとは考えていません。逆にいえば、もしそうだとするなら、仏教は生命の鬩ぎ合う世界を説明できないことになります。むしろ、ほとんどの生命が煩悩の働きで悪業を重ね、輪廻に囚われているのが現実であり、それをいかにすれば解消できるかを、未来にわたり考え実践し続けてゆくのが仏教の立場なのです。よって仏教の最終目的は、あらゆるものが悟りを開き仏になった世界。その理想的世界では、六道輪廻自体が消滅し、生命の鬩ぎ合うこと自体も解消されてしまうことになるのです。