精進料理にも肉の再現がありますが、僧侶も肉を食べたかったということでしょうか。

ああ、なかなか面白いところを付いてきますね。精進料理は、中世に禅宗寺院で発展した文化ですが、確かに鳥や獣、魚の肉の味に似せたものが早くからありました。室町時代の『庭訓往来』十月状返には、点心類として「鼈羮・猪羮…」といった名称があり、スッポンや猪の肉を模した羹が作られていたことが分かります。僧侶たちもも本当は肉を食べたかったのかもしれませんが、あえてこうした料理を設けることで、殺生をしていないことを強調したとも考えられます。ちなみに、植物性のものを用いていかに肉の味を出すかという試行錯誤は、いわゆる「和食」の発展に大きく寄与することになったようです。