柿本人麻呂が作った天皇即神の和歌など、その意味を理解できる人はどの程度いたのでしょうか。識字率との関係はどうなのでしょう。

歌とは本来書かれるものではなく、詠まれるもの、歌われるもの、口承の世界の文芸であったわけです。ゆえに、識字率は大きく関係しません。偉人のことを○○ノミコトなどといいますが、このミコトは「御言」で、その人物から発せられる言葉を指すわけです。いわば、口頭の言葉が、命令が、人物を象徴していた。歌とは、そのような世界で意味を持ったものなのです。あたかも神を祀る祭文のように、天皇行幸する現場で即神の歌が詠まれることにより、天皇=神の図式は、人々の脳裏に深く刻まれるようになっていったのです。