なぜ人間は、血筋や血統を重視するのでしょうか。

大きな問題です。まず生物学的にいえば、大脳新皮質の拡大によって高度な抽象能力を手に入れ、過去と未来を想像する時間概念を発展させたからでしょうね。そのなかで、自分に繋がる人々=祖先、自分が繋がってゆく人々=未来を構想することができるようになった。また、遊動性社会においては、血縁的に濃い小集団が、その存続をかけて移動を繰り返してゆく。成員たちの間には、他の集団との競合や交渉、対立の過程で、どのようにして自分たちが生き残ってゆくかが重要な課題になったはずです。そうしたなかから、血の連続性の重視、という見方も生まれてくるのかもしれません。例えば儒教では、自らの身体を、父祖の遺体であり、無傷なままに子孫へ受け渡してゆかねばならないと考えます。こうした見方などは、血統のプリミティヴなイメージに近いかもしれません。