仏教説話では、動物はしゃべるが植物はあまりしゃべらないな、と思いました。これも、無情のものと考えられていたからでしょうか?

そうですねえ、樹木神は普通に話をするのですけれど。しかし、日本列島に最も広く分布する昔話である大木の秘密(ある巨樹を伐ろうとするが、切り口が翌日になると再生してしまっていて、いくら伐っても伐れない。疲れた木樵の一人が夜、木の下に宿っていると、木々の上で樹霊たちのひそひそ話す声が聞こえ、どうすれば巨樹を伐ることができるか盗み聞く)の初見として(原型は中国にあり)、『今昔物語集』のなかに、上に触れた飛鳥の斎槻を伐る話が収録されています。ここでは、樹霊がどうすれば巨樹を伐れるかつい喋ってしまうことがポイントなので、樹木は喋ります。ほかにも、「三十三間堂棟木の由来」として浄瑠璃・歌舞伎などになってゆく樹霊婚姻譚でも、樹木は喋ります。確かに、純然たる仏教説話には少ないかもしれませんが、関連する領域では多くの事例がありますね。