出家をした天皇は、それ以降は政治に関われないのでしょうか。

出家の意味するところは、平安時代を通じて次第に変わってゆきます。宇多天皇花山天皇の頃には、出家は政治の表舞台から引退を意味していましたので、出家した天皇が直接政治に関与することはありませんでした。しかし、同時期から次第に〈入道〉の概念が成立し始めます。この言葉は本来出家とイコールでしたが、日本では、とくに皇族や三位以上の貴族が仏門に入ることを指し、やがてそうした人々への敬称としても用いられるようになります。また入道者のなかには、剃髪したものの寺院には入らず、世俗の生活のまま仏道修行を続ける者も生じるようになりました。結果、出家後も治天の君として隠然たる勢力を持つ法皇、出家しながら政治を執る清盛入道のような人物も成立したのです。