文明史学と文化史とは違うものなのでしょうか?

お話ししたように、文明史学は非常に啓蒙思想的かつ功利主義的な歴史観で、人間の進歩が文明によって可能になることを描き出すものです。そうした進歩史観では、常に現在の状態が最良であり、過去へ遡るほど、野蛮で未開な状態に近付くこととなります。すなわち、文明史学は過去・現在・未来に価値付けをするものなのです。一方の文化史には、そうした価値付けは存在しません。人間が、自然環境を素材とし、それとの関わりのなかで構築してきた文化を、さまざまな面から探究します。近年ではその政治との関わりに注目が集まっており、例えば平安時代の女流文学が宮廷内の中宮の評価にどのような影響を与えたか、第二次世界大戦中の絵画や映画、文学が、国民のイデオロギー的操作にどのような影響を及ぼしたかといった、政治文化史が盛んに議論されています。