江戸期の人々の歴史観は軍記物などを通じて形作られていたとのことだが、そこに政権の意向は何らかの形で反映したのか?

太平記』や『平家物語』は、例えば儒教的価値観を語る部分においては幕府の統治思想と一致をするので、とくだんの問題は含みません。しかし、その書物を通じて例えば勤王思想が強まり、幕府への批判が高まったりすると、非常に都合が悪いということになります。江戸幕府は政権批判には敏感であり、種々の規制や弾圧を行いました。「江戸の歴史叙述は自由で豊か」というお話をしましたが、政治の世界をも考慮に入れると、そこにはやはり種々の規制や窮屈さがあったものと思われます。