授業のなかで、今は歴史の根拠がアジア的共同体にある、といったようなことを仰っていましたが、具体的にどういうものか想像がつきにくかったです。

正確な文脈では、近代的個が確立していないアジア的共同体では、個と神との葛藤をめぐるランケ的な実証主義が、深いところでは受容されなかったという話だったと思います。アジア的共同体は、個よりも共同体の集合性が強く、またその共同体の意志が、首長によって体現されるという性格を持っています。ゆえに、首長や君主を英雄としていただく、歴史の主体として位置づける考え方に陥りやすい。ランケの神の代替として天皇制が機能してゆくのは、そうした心性も大きく影響していると考えられます。