日本はかつて多様な宗教を信仰していたと思うのですが、いまなぜ無神論となってしまっているのでしょうか。

現在の日本社会は、必ずしも無宗教ではありません。それは、キリスト教的な宗教観でみた場合「宗教的」とはいえないだけで、実際はかなり宗教的なのです。例えば、正月。多くの人々が神社や寺院に初詣に出かけ、1年の無病息災などさまざまなことを祈願します。また7〜8月には、祖先の墓参のために多くの人々が帰省します。これらは列島社会全体で起きており、世界的にも注目すべき事例です。ただ列島の人びとは、キリスト教的な超越的神格ではなく、もっと身近に存在する自然の精霊のような、アニミズム的な対象を崇めているのです(ただしこのような信仰のあり方自体が、年年衰退しつつあることも確かです)。