世俗的権力の足りない部分を宗教的権威によって補完するという現象は、現在ではみることができません。明治政府の政教分離政策が原因なのでしょうか。

上でも述べましたが、それが近代国家のひとつの条件であるためです。しかし日本という国家が奇妙なのは、象徴天皇制が存在することによって、やはり国家権力が宗教的権威によって補完されていることです。また靖国神社のように、一般宗教法人であるはずの一神社へ国家の官僚が公人として参拝し、あたかも国家的祭祀が斎行されているかのような印象が醸成されている点も問題です。靖国神社は、授業でお話ししたとおり、国家神道が形成されてゆく段階で神道から排除された宗教的機能=死を扱うことを、一身担うべきものとして設置された機関です。それが未だ、国家に関係するところで機能しているということは、戦前の体制が持続していることをも意味します。