個人的な意見ですが、厩戸王の伝説がイエス・キリストのそれと酷似しているように感じました。何か関係があるのでしょうか。

このあいだの授業でも触れましたが、皆さんの抱いた疑問は、かつて〈抹殺史学〉の権化であった久米邦武も共有し、これは中国に入ったネストリウス派キリスト教=大秦景教の影響とみて、『書紀』を批判する論文を書いています。その可能性はないわけではないのですが、例えば王権と馬との関わりは古墳時代以降顕著になり、権力・武力の象徴としての馬という位置づけを獲得しています。またインドには、王権の正当性を喧伝する目的で、太陽の象徴である馬と王妃が疑似交接するという、凄まじい祭儀が行われていました。キリスト教に起源させなくとも、同じような要素はすでにアジアにあったというのが、現在の一般的な考え方であると思います。