仏教が伝来した頃の仏像は、聖徳太子をモデルに作られたと聞いたことがあるのですが、それは太子が当時から神格化されていたということでしょうか?

法隆寺の救世観音像ですね。厩戸王が創建したと考えられる、あるいは創建に関与したと考えられる寺院では、宮廷一般よりも早期に彼の神聖化が始まったと考えられます。太子を救世観音に見立てるのはそのうちのひとつで、一種のメシア信仰です。元来は如意輪観音という、あらゆるものごとを思いどおりに成就する如意輪=仏教の象徴を持った観音ですが、末世の混乱から仏法により世界を救済するとの希望が託されたのです。その背景にも、当時の古代国家が東アジアにおける国際的緊張のなかで抱いた危機感、国内の政治的混乱があるように思われます。