日本古代の氏族制と、現在でも各地に残る部族制とでは、何が異なるのでしょうか。

社会が氏族共同体を軸に構成されているという意味では、基本的に同じです。しかし日本古代において氏族制という場合は、古代国家の運営が氏族によって担われているというニュアンスが強いですよね。すなわち、一定の知識・能力をもとに官僚と認められた集団が、その役割に応じて幾つかの官職に編成され国政を担うという官僚制に対し、一定の知識・技術に秀でた世襲氏族集団がその特性に応じ、集団として国政を分担するというのが氏族制です。前者においては、例えば中臣氏のAという人物が仏教行政に秀で、試験に合格して官僚となれば治部省という仏教を管轄する役所へ配属されますが、後者においては、神祇祭祀を担う氏族の一員である中臣氏のAは、父祖と同じく神祇祭祀を通じて国家へ奉仕することになるわけです。