最近は交通網の拡大によって都市へのアクセスがよくなり、必ずしも都市へ住む必要がなくなったので、都市化を目指す思考から田舎へ回帰する思考へ移る可能性があると感じている。農村が忘れられた影響は、これ以上広がりをみせないのではないか?
柴草山の集合的アムネジアにおいて特徴的なのは、その記憶喪失が都市部だけではなく、農村においても起きているということです。これは、農村の生活サイクルが変化したために、生業と密接に結びついた柴草山の記憶が塗り替えられてしまったものと思われます。すなわち、都市/農村の対立だけが問題ではないわけです。それから、確かに近年ユーターン現象も多く聞かれるのですが、日本列島全体でみた場合には、政治・社会・経済の中央化が著しく進行しています。例えば、東日本大震災以前には真剣に議論された首都移転問題、道州制導入の問題などがまったく聞かれなくなり、地方自治の力はむしろ弱められて、国権のみが強化される一方となっています。中央/地方の格差は、むしろ拡大していると警戒するべきでしょう。