日本政府の政策によってアイヌ人の文化を失ったことは猛省すべきだが、近代国家として農耕などの文化を与えたことも事実であるので、負の歴史も正の歴史も事実として学ぶことが重要だと感じた。

それは違います。そもそも、農耕が狩猟より優れているとの認識自体、極めて限定的なエスノセントリズムに過ぎないことは、これまでの講義のなかでも指摘してきたとおりです。しかも、この同化政策による農民化は、アイヌの人々の望まぬものであったわけですから、なおさらです。先住民族への圧迫を「近代国家の恩恵」で糊塗しようとする言説は、それ自体が帝国主義植民地主義的価値観の反映でしかありません。「広島や長崎への原爆投下によって戦争が終結し、多くの人命が救われたのだ」という言説と、構造的には何ら変わりがありません。