私は高校で歴史をとっていないので知識がないのですが、アイヌと聞いて分かることは「北海道の先住民」ということのみです。アイヌ人は顔や身体に特徴はあるのでしょうか、話す言語に特徴はあるのでしょうか。

まず大きな誤解であるのは、「民族」という概念が社会的・文化的なものであり、自然科学的・生物学的なものではないということです。例えば、現在国際社会で最も一般的な、エクアドルの人権学者ホセ・マルティネス・コーボが国連への特別報告書で行った定義は、「先住民の共同体、人民および国民は、彼らの領土に発達した侵略前の、あるいは植民地前の社会との歴史的継続性を保ちながら、その領土、あるいはその一部に現在優勢である社会の他の集団から、彼ら自身を明白に異なっていると考えている人々」(上村英明先住民族解放出版社、1992年)といったものです。近年のアイヌ民族否定論は、この概念に対する不勉強から起きるもので、これはやはり日本社会のなかで民族概念が充分認知されず、理解されていないことと関係があります。日本は国籍自体も血統主義で、例えばアメリカなど生地主義の国では、子供がアメリカで生まれれば同国籍を得られるのに対し、日本では両親のどちらかが日本人でないと取得できません(もちろん、条件が整えば帰化が認められる場合もあります)。こうしたものの考え方ともどこかで結びついていそうです。