ブラック企業という云い方が差別語だというのは、考えすぎではないか。また、黒という色彩を否定的にみるような日本文化の伝統と、関係があるのではないか。

ブラック企業という言葉の「ブラック」は、そもそもネット・スラングです。ネット・スラングには英米圏で使用されたものが日本へ転用される場合が多く、「黒企業」ではなく「ブラック企業」と表現されている点も、そのあたりの事情を反映していると考えられます。もちろん、日本文化の言葉遣いのなかにも、黒をマイナス・イメージで表現するものがあり、ブラック企業が流行し浸透した一因にもなっているでしょう。しかし、現在列島社会にも、多くの黒人の人々が暮らしてます。彼らがこのブラック企業という言葉を聞き、どう思うか考えたことがありますか。グローバルだなんだといっていながら、そうした他者への配慮が何もできない現実が、われわれの前にあるのです(ぼくだってそうなのです)。ブラック企業における「ブラック」の使用の仕方が差別的でないというのなら、黒人の人々を前にして、その理由を明確に説明できるかどうかが問われます。