僑県郡のような徙民政策は、明治の北海道開拓によく似ていると思いました。このような民衆の移動は、世界的にみられるものなのでしょうか? / 徙民政策はいつまであったのでしょうか?

そうですね、まさに明治の北海道開拓移民などは、徙民政策の一種でしょう。そのほか、近代におけるハワイ、南米、アジアなどへの国策移民も、(強制ではありませんが)徙民政策と考えて差し支えないと思います。移民・植民に関する研究は、現在世界的に盛んになっており、移民者・植民者のライフヒストリー収集にまで至っていますが、主に近代のそれに限られており、前近代との連続性/非連続性をどのように考えてゆくかが課題となっています。ヨーロッパにおいては、オリエント、アジア、アフリカなどとの関係も含め、歴史上大規模な移動が何度も起き、そのことが巨大な政治的・社会的混乱をもたらしていますが、かつて社会史研究においては、より小規模なレベルでの移動についても緻密で啓発的な研究が行われていました。阿部謹也の『ハーメルンの笛吹き男』などは、中世の植民請負人の実態を捉えた注目すべき研究です。