ギリシャ神話などにも、シャーマンが経験したことのエッセンスが含まれているのでしょうか。

神話には幾つかのレベルがあり、まずはシャーマンが語り出し共同体において一定の社会的機能を担っている段階、それらが王権や国家によって収斂・編集され統一的な価値を持つ段階、娯楽化・芸能化が進んだ段階です。日本神話の代名詞である『古事記』『日本書紀』は王権神話・国家神話であり、ギリシャ神話は娯楽化・芸能化した段階です。よって、双方ともそのままに原初段階の神話と受け取ることはできませんが、やはり形式としてはその痕跡を見出すことができます。ペルセウスが神の子という聖瘢をもって生まれ、数々の試練をゼウスの協力を得て克服し、最終的に海の怪物を倒してアンドロメダを救出する展開などは、成巫譚の典型でしょう。アルゴ・ノーツの冒険、ホメロスオデュッセイアなども同様です。オイディプスの一代記などは、フロイトによって人間心理の成長過程と重ね合わされて分析され、エディプス・コンプレックスという重要概念が生み出されたことでも有名です。