多遺体再葬すると、自分たちの父祖のルーツが分からなくなってしまうと思います。なぜそのようなことをしたのでしょうか?

これについてはなかなか分からないことが多いですが、恐らく縄文の段階では祖先は個別の存在ではなく、ひとつの霊的な集合体として意識されていたのではないでしょうか。遺骨は、その呪具・祭具のようなもので、特定個人を意味するものではなかった。始祖神話も、集団の様態によって変形することがありえますが(新たに集団を加えると、彼らの持っていた始祖神話が加えられたりする。授業で紹介したイスラエルの系譜と同じです)、多遺体再葬なども同じ意味を持つものでしょう。個別の小集団の祖先は、複数一緒にされることで、新たな大集団の祖先として再生しているのです。