蛇神は、なぜ他の動物に比して特別な位置を与えられているのだろうか。また、祀られることで、悪者だった蛇神がプラスの意味付けを持つようになるのはなぜか。

蛇が広汎に信仰されていたことは確かですが、それはやはり、人間の文化が水と切っても切れない関係にあるからでしょう。ですから、砂漠や草原などの乾燥地帯では、そもそも蛇があまり棲息していませんので、強い信仰はみられません。寒冷な地域でもそうですね。また、水の恩恵を受ける生業として、やはり農耕社会と非常に密接な関わりがある。日本列島でも蛇は縄文時代から信仰されていますが、土器などにそのレリーフが出現するのは、原始農耕の始まった縄文中期の中部地方などが最古です。逆にいうと、狩猟採集社会などではあまり発展しない信仰である、ということになりますね。また、祭祀という行為は、列島の宗教文化においては、神霊を適正な方向に機能させる意味があったようです。前近代の列島の神々、アニミズムの要素を色濃く残した自然神は、人間に恩恵も与えますが、同時に深刻な災禍ももたらす。自然を象徴しているのですから、当たり前です。その災禍をできるだけ回避し、恩恵をより多く獲得するために行うのが、神を称え、歓ばせ、そのエネルギーを活性化するために行う祭祀なのです。