「海中の嶋」への遺棄について。海へ流すという行為が異界へ帰すという意味ならば、人形を自分の身代わりに川へ流したりする風習は、自分の身代わりを異界へ送ることになるのでしょうか。

もちろんそうですね。人形とは形代ですから。より正確には、自分に付着した罪や穢れを人形に代わって背負わせ、これを他界へ送るということになります。人形のほかにも、平城京段階で人面墨書土器、土牛、土馬、絵馬などが類似の機能を持つものとして用いられています。東国では、「国玉神に奉る」と墨書された土器が発掘されていますが、これなどは『霊異記』の説話を参考に、自分を連れてゆく冥界の使者に奉献し帰ってもらうための饗応祭儀に用いられた、と考えられています。