そもそも、人間が過去を意識するようになった切っ掛けは何なのだろう。

倫理的に過ぎるかもしれませんが、やはり、自分自身の行動において反省することこそが、「振り返ること」だったのではないでしょうか。未だ定住を始めていない移動生活においては、毎日が生存と関わる選択の連続だったはずです。例えば、自分たちの進んできた方向が誤りであった、集団を危険に曝すことになってしまうのだとすれば、早急に決断をして引き返さねばなりません。安全な段階まで戻って、よりよいと思われる方向へ転換する必要があります。過去を顧みて検討し適切な判断を下すこと、すなわち反省をすることが、目にみえない過ぎ去った時間を意識することになる契機でしょう。だからこそ過去は、本来実用的なものであったのです。