文字使用の問題性を語る神話は、今まで口承によって有利な地位を得ていたシャーマンが、地位が危うくなることを感じて盛り込んだものなのではないか?

それは充分考えられることなのですが、やはり「文字使用を憂える言説」が文字として残っている点が重要です。中国の史官の例にしても、これまで口承の神話などを管理していた人々と、神聖文字によって情報の記録・管理、神霊との交渉を始めた人々とは、恐らく階層として重複するんですよね。授業で扱った古代日本の斎部広成も、恐らく文字による神話の記録を批判することで中臣氏のあり方を批判しているのでしょうが、自分自身も斎部氏の伝承を文字化している。もちろん、その情況は地域や文明によって相違するとは思うのですが、口承層/書承層の分裂、利害対立だけに要因があるのではないことは確かです。