「歴史は繰り返す」という言葉は、マルクスも口にしたと思います。唯物史観もそこから生まれたと思いますが、彼も一種の政体循環論者だったのでしょうか。

「歴史は繰り返す」は、古代ローマの歴史家クルチュウス=ルーフスの言葉とされ、マルクスはそれを引用して、「歴史は繰り返す、一度目は悲劇、二度目は喜劇として」と述べたわけです。ルーフスの場合は一般通念を言葉にしたに過ぎませんが、その内実は、文字どおりの繰り返しです。しかしマルクスの場合は、類似の情況が再現されるという意味で、同じことが起きると述べたわけではありません。マルクス唯物史観は直線的進歩史観ですから、円環的時間の政体循環論とはまったく立場を異にします。しかし、歴史は法則によって出来すると考えている点はポリビュオスと同じで、「繰り返す」の真意も、理論的・法則的に同一の条件が整ったならばという前提があるものと思われます。