日本は明治以降万博に出展し、先住民族の文化としてアイヌの展示を行ったとされています。なのに現在その先住性を否定するというのは、ダブル・スタンダードで違和感を覚えました。

確かに、「先住性を認めるか否か」という点では、180度意見が違ってしまっていますね。しかし、差別性という意味では、同じ構造を抱えています。先住民族としてのアイヌ文化を「展示」するということは、実はこの時代、優生学的な差別思想を含んでいるのです。次回の講義でも触れますが、「アジアの民族でありながらヨーロッパ的顔立ちを持つ」というアイヌの人々は、白人優生思想のもとでは好奇の対象となり、江戸時代から外国人による遺骨の盗掘が起きていました。万博での展示、それに対するヨーロッパの眼差しは、その延長線上にあります。余談ですが、斉明天皇5〜7年(659〜661)に派遣された第4次遣唐使は、王権に服属した蝦夷を唐皇帝に示し、その非文化性を強調して、倭が唐と同じように夷狄を従えていることを主張しています。領域国家が先住民族に対して持つ基本的な構造は、古代から変わっていないのかもしれません。