アイヌ社会で、狩猟―加工―交易などの生活を統括するリーダーが出てきたとあるが、それはどうしてですか。

アイヌ社会が交易に対する依存度を強めてゆけばゆくほど、交易品と効率的に生産する必要が生じてきます。クロテンやラッコの毛皮などは、自分たちで消費するために狩猟・生産する場合と、交易品として狩猟・生産する場合とでは、維持・確保しなければならない質・量がまったく異なります。大量の商品を常時ストックしておくためには、それらを狩猟する作業(ラッコなどは、千島のほうへ渡海しなければ狩猟できませんでした)、皮を剥ぎなめし毛皮製品を生産する作業、それらをもって樺太アイヌや和人などと交渉・交易する作業が、それぞれハイレベルで効率的に遂行されなければなりません。自ずと、各集団ごとに専門化すなわち社会的分業が進むことになりますが、それぞれがまったく別々に展開しては意味がありませんので、これらを統括し差配することのできるリーダーが必要になってくるわけです。