蠣崎氏は、豊臣/徳川から朱印状や黒印状をもらう前からアイヌと交易をしていたのに、わざわざ許可をしてもらうメリットはあったのですか。 / 朱印状、黒印状の違いはなんですか。

統一政権の認可ですから、当然必要です。蠣崎氏が特別にというわけではなく、各地の大名たちが、天下人に追従することで本領安堵を求めたのと、まったく変わりません。承認を得ずに交易を続けることは統一政権に逆らうことであり、また場合によっては政権の専権事項である海外交易に抵触する恐れもある。いつ改易転封を命令されてもおかしくはないわけで、交易が生命線の松前氏としては、何とかその保証を取り付けることこそが、当時の最大の課題であったはずです。なお、朱印状/黒印状の相違については、前者の方が格式の高い場合に用いられるという程度です。織田信長は公的指令を朱印状、私的書信を黒印状で発しており、奉行たちは主君に配慮して黒印状のみを用いていました。徳川幕府もそれを踏襲したようです。家康はふつう、大名の所領安堵を朱印状で行っていますが、松前のそれが黒印状なのは、交易保護が所領安堵とは同列にみなされていなかったことの表れなのでしょう。