◎1について。蛇に転生した姥を神として祀る話が出てきますが、災禍をもたらすものをなぜ祭祀しようと思ったのでしょうか。

列島文化における神祇への信仰は非常にプリミティヴで、神は、常に災禍と福慶の双方をもたらす両義性を持っていました。神の求める祭祀を適切に行えば、神は我々を守護し豊かな実りを授けてくれる。しかし適切な祭祀が行われない場合には、天譴とも祟咎ともいうべき災禍をもたらす。ゆえに災害が勃発すると、人々はまず卜占や託宣を通じて神の意志を確認し、それに沿って適切な祭祀を行うことで、社会不安を抑え問題に対処しようとする。それで事態が鎮静化すればよし、もしおさまらなければ、神の意志に外れているということで再び三度その意志を確認し、新たな祭祀を斎行してゆくわけです。災害など、いつかは止むもの。よって祭祀は、常に効果のあるものとして認識されてゆくのです。