資本主義のオルタナティヴについて、社会主義をそのまま用いるわけにはゆかないとすれば、どうすればよいのでしょうか。先生はどう考えますか?

難しい問題です。現実的には資本主義を是正しながら新たな枠組みを志向するしかないでしょうが、まずは新自由主義の跳梁を抑えつつ、社会のセーフティネットを、それを支える市民の心性の部分も含めて再構築してゆかねばなりません。そのためには、職業や階層、民族、国家などのカテゴリーで分断されてしまっている人々を、どうにかして結びつけ、相互の利益のために意見交換する機会を作ってゆく必要があります。どこかで、国民国家というシステム自体の限界や問題点についても、きちんと話し合っておかねばならないでしょう。この授業の最後にお話しすることになるパブリック・ヒストリーは、そのための試みのひとつです。