人がノスタルジーを感じるのも、集合的記憶によるものなのでしょうか。

授業で紹介した『里山という物語』でも取り上げていますが、小学生を対象にしたある調査では、地方に田舎を持たない小学生も一律に、里山的景観を「懐かしい」と感じる傾向があるようです。考えてみると、教育の各段階でも、さまざまな形で里山イメージは喧伝されています。音楽では、唱歌「ふるさと」を習い、ステレオタイプの農村=故郷イメージが植え付けられる。スタジオジブリのアニメーションをはじめ、類似のイメージはマンガやアニメーションでもたびたび見受けられます。学校によっては、林間学校などを年中行事に組み入れているところもあるでしょう。そうした刷り込みの結果、いつの間にか、自分にとって縁のない里山的風景にノスタルジーを感じるようになる。これらはまさに、集合的に形成された記憶といえるでしょう。