ブローデルの歴史の三層構造は、マルクスの階級闘争を歴史に当てはめたようなものと考えていいでしょうか? / ブローデルが評価された理由が、いまひとつよく分かりません。

マルクス唯物史観ブローデルの三層区分が異なるのは、以前に授業で指摘したとおり、まずはpratiqueとpraxisの相違になりますね。マルクスの場合、歴史を展開させる革命は、イデオロギーから解き放たれた自由な個人の自覚的な実践によりますが、ブローデルの場合は、日常性のなかの慣習行動が徐々に歴史を展開させてゆくと考えます。地理学や人類学の手法をうまく融合させながら、時間を扱う学問独自の観点から文明の展開過程を説明した点で、ブローデルの研究成果は学問への希有な貢献と評価されたのでしょう。ジオヒストワールは人類学における構造と並び称されますが、それを認識論における言語の構造としてではなく、自然環境と人間との関係のあり方の密接性として提示したところなどは、ラ・ブラーシュ地理学はもちろん、マルクスの影響もみてとれるのではないかと思います。