感性史には、五感などが主に含まれていると思うのですが、例えば好き嫌いのような深さがあるとして、どのくらいの深さまで調べるのでしょうか?

まあそれはケース・バイ・ケースでしょうね。しかしフランスの人文・社会系学問の場合、好き嫌いなどの問題は、社会に由来する部分と個人に由来する部分とを分けて考える場合が普通ですね。一般には、好き嫌いは個人に帰せられてしまいますが、実はデータを網羅的に集めてみると、ある階層や集団などで同傾向を示す場合が多い。社会学者のピエール・ブルデューが提唱した〈ハビトゥス〉などはまさにそれで、個々人の趣味や嗜好も、多くは階級の再生産をめぐる戦略に基づいている。どこまでが社会に帰せられ、どこからが個人に帰せられるか、その緊張関係が、心性史や感性史研究の醍醐味のひとつかもしれません。