ユダヤ人は常にマイノリティー的な立場に置かれているとはよく聞く話なのですが、マルクスや他の著名なユダヤ人もそうだったのでしょうか。マルクスは晩年までマイノリティー的存在だったのでしょうか?

授業では、「ユダヤ人はマイノリティー的立場で」とはいっておらず、「マージナルな立場にあって」と説明したと思います。マジョリティーのなかにおいてもマージナルな情況は発生しますので、両者は類似はしていても同一ではありません。マルクスは活動家でしたので、ヨーロッパ諸国の権力との関係においても、その置かれた情況は最期までマージナルでした。ユダヤ人であったこととの関係でいえば、例えばロシア貴族出身の無政府主義者ミハイル・バクーニンとの確執があります。彼は政治思想的にマルクスに共鳴しその協力者となりましたが、元来強固であった反ユダヤ主義が最終的にマルクスへの陰謀論的な批判へ向かい、袂を分かつことになります。ユダヤ人であるがゆえのマージナルなポジションは、マルクスにその生涯を通じてつきまとうことになるのです。