私の周囲には、歴史に関心を持っている人間がほとんどいません。昔に比べ、歴史学に対する人々の関心は高まっているのでしょうか?

耳が痛いというかなんというか。しかし、例えば出版界においては、歴史は人気の衰えを知らぬ分野で、毎年厖大な啓蒙書・専門書が刊行されます。最近では、例えば中公新書の『応仁の乱』が、40万部のベストセラーになっています。その数は、文学研究では比較にならないほどです。サブカルチャーの素材としても需要が大きいので、歴女や刀剣女子などブームにも事欠きません。ただし、それらの多くはいうなればプラクティカル・パストに属するもので、ヒストリカル・パストに当たるものはそれほど多くはありません。「関心が高まっている」とは、いえないかもしれませんね。