両論併記の問題性については分かりましたが、それをジャーナリズムに求めるのはどうなのでしょうか。白黒はっきりしていないないようだからといって、報道を自粛してしまうのは、かえって中立性を損なう可能性もあります。

両論併記について、はっきりしないものは報道するな、とは一言もいっていません。検証せよ、といっているのです。近年の日本のジャーナリズムの大きな問題は、情報のソースからその正確さ、内容の事実性などを検証する努力を、どんどん怠りつつある点です。ネット・ニュースでは、ブログやツイッターの記事をそのまま要約して載せるものまで見受けられます。そもそも新聞自体、報道姿勢や政治思想は会社によって異なり、それによってニュースの選択、伝え方、論評も相違しています。きちんとした検証がなされなければ、両論併記自体が「偏った方法」になることもありうるのです。ホロコースト否定論などは、まさにそういった事例です。「両論併記」によってジャーナリズムがホロコースト否定論を無批判に喧伝することが、歴史修正主義者の目的を達成することになってしまうからです。