史実に基づいた歴史を正確に学び、考察を深めることが歴史を学ぶうえで大切なことだとは思うが、ある程度自由すぎるとかえって危ない思想を持つ人が出てくる気がする。 / 柔軟で多角的に歴史を考えようというのはすばらしいけれど、それを学校教育の頃から行おうとすると、国民国家としての意識は保てるのでしょうか。

上にも書きましたが、現代はナショナル・ヒストリーのみが正しい歴史としてまかり通る時代ではありません。いかに学校でナショナル・ヒストリーを教えようが、一般社会ではそれ以外の歴史(ポストモダン的なもの、また前近代的伝統を引き継ぐもの)がまかり通り、歴史学の世界では、世界的にもナショナル・ヒストリーの超克を目指すのが当然になっています。ゆえに、学校の歴史教育をより自由化したところで、国民国家は崩壊しません。むしろ、ナショナル・ヒストリーを乗り越えたグローバル・アイデンティティー、あるいはその普遍性・画一性を調整し多様性を重んじるようになった新たなヒストリカルアイデンティティーが、求められるようになっているのが現状でしょう。