レヴィ=ストロースのトーテミズムに対する批判や、神話が他地域から伝わっている可能性も考えると、神話や習慣からトランス・スピーシーズ・イマジネーション的な分析をするのは慎重になるべきと思う。

まず、分析対象とする神話が、その地域にどのような形態として存在するのか、生活の基軸に据えられているのか、それとも単に娯楽に過ぎないのか、といった調査や判断が重要です。また後者の場合であっても、それを語り継いでゆく人々の認識のありようを探る資料として、用いてゆくことは可能です。また、レヴィ=ストロースのトーテミズムは分類であるとの分析は、やはり認識世界の論理的思考のみを対象とするもので、彼らの感性的世界を充分に明らかにするものではありません。現在の人類学は、むしろ後者の視点に立って、感性・心性の面を重視しつつ動植物と他者との関係の分析を進めています。