異類婚姻譚について、生まれた子がどちらの種に属するのか、またいわゆる混血の誕生はないのか、といった点が気になりました。

異類/人間のどちらが男性、どちらが女性であっても、例えばトーテム信仰的な視野から語られる場合には、生まれた子は民族集団の祖、すなわち人間である場合は多いと思います(ナーナイの話に出てくる熊の子は、人間の娘が熊に掠われ、熊の集団に入って生んだ子だからこそ子熊として生まれているのです)。しかし同時にそれは、単なる人間ではなく、異類の力、野生の力を分有した存在です。『後漢書』などにも始祖伝承の語られる中国土家族などの祖・稟君は、虎と人との異類婚姻によって生まれた英雄ですが、死んだ姿は虎であったと伝承されています。日本の大王家=天皇家も、天つ神の子孫であり、またワニ=海神の血を引くからこそ、地上の支配者たりうる霊性を持つ者と扱われるのです。