農耕原罪論のところで、中国王朝と北方遊牧民族の対立を想起した。農耕/遊牧の二項対立的視点が、根底にあるのかもしれない。

そうですね。そのあたりの葛藤を理解するための参考文献として、中国の某文化人類学者がペンネームで書いた自伝的小説、姜戎『神なるオオカミ』(講談社)を推薦しておきます。映画にもなりましたが、小説の方がずっといい。文化大革命の時期、モンゴルに下放された漢人青年が、モンゴル民族とトーテム動物である狼との特別な関係をみてゆくなかで、自らの世界観・歴史観を再検討してゆく内容です。「農耕文化、農耕民族こそ至上」という枠組みのパラダイム・シフトを、内面的に追いかけるような内容となっています。